Inland Sea region of Japanww2:1945年3月19日、7月24日~28日

呉軍港空襲/Bombing of Kure

呉軍港空襲

呉軍港空襲は、太平洋戦争(大東亜戦争・第二次世界大戦)末期、呉軍港無力化を目的に、アメリカ海軍第五艦隊:第58任務部隊が行った空襲である。初撃となる1945年3月19日の呉軍港空襲では、前日から大日本帝国海軍:第五航空艦隊が反撃にでたことで九州沖航空戦が勃発。また、多数の艦艇が停泊していたため、激しい対空戦も展開された。当時の呉を題材とした漫画・映画作品「この世界の片隅に」では、呉軍港空襲のシーンも描かれている。

呉軍港空襲での各国の参加艦艇

【日本海軍】 ■指揮官 「金沢正夫中将」「宇垣纏中将」 ▼空母:7隻 『鳳翔』『天城』『葛城』『龍鳳』『海鷹』『生駒』『阿蘇』 ▼戦艦:5隻 『榛名』『伊勢』『日向』『大和』『摂津』 ▼重巡洋艦:2隻 『青葉』『利根』 ▼軽巡洋艦:2隻 『北上』『大淀』 ▼装甲巡洋艦:2隻 『磐手』『出雲』 ▼駆逐艦:8隻 『涼月』『冬月』『宵月』『椿』『』『』『』『朝顔』 ▼潜水艦:3隻 『伊400』『伊404』『呂67』 ▼潜水母艦:1隻 『駒橋』 ▼第五航空艦隊(航空機:約400機) ▽零式艦上戦闘機 ▽紫電 ▽桜花一式陸上攻撃機 ▽彗星 ▽銀河彩雲 ▽飛竜(陸軍機)  VS 【アメリカ海軍】 ■指揮官 「ウィリアム・ハルゼー大将」「レイモンド・スプルーアンス大将」「マーク・ミッチャー中将」「ジョン・S・マケイン中将」 ▼空母:12隻(▽搭載機:1,400機) 『バンカー・ヒル』『ランドルフ』『イントレピッド』『ヨークタウン』『エンタープライズ』『フランクリン』『ワスプ』『カウペンス』『ベロー・ウッド』『インディペンデンス』他 ▼他艦艇:多数

九州・四国を守れ!九州沖航空戦

1945年3月18日、アメリカ海軍第五艦隊:第58任務部隊の空母艦載機1,400機が、日本の九州・四国沖に出現する。これを受け、日本海軍第五航空艦隊は敵艦隊へ向け攻撃隊124機、神風特別攻撃隊69機を出撃、迎撃には「零式艦上戦闘機」などが対応し九州沖航空戦が勃発した。 両軍航空機による激しい航空戦が展開されるなか、熾烈な対空砲火をくぐり抜けた「彗星/艦上爆撃機」の急降下爆撃で空母『ヨークタウン』に250kg爆弾1発、『エンタープライズ』に500kg爆弾1発が命中したほか、『イントレピッド』に特攻機が突っ込み小破させた。また、『エンタープライズ』は味方の砲弾を右舷後部に受け、さらに損傷した。 日本海軍航空隊はこの日の九州沖航空戦でアメリカ軍機を29機撃墜したが、多勢に無勢、日本軍は特攻機を含め攻撃隊161機を損失、迎撃戦では零戦47機を失った。

呉軍港空襲3月19日、日本海軍航空隊の反撃!

1945年3月19日、アメリカ艦隊は高知県室戸岬沖80kmにまで迫り、呉軍港空襲を開始する。日本海軍第五航空艦隊は、これの迎撃に第343海軍航空隊を出撃させ、さらに攻撃隊として全航空戦力をアメリカ艦隊へ差し向けた。 第343海軍航空隊には、司令・源田實大佐より古来これで十分という状態で挑めた戦の例などない。目標は敵戦闘機、爆撃機には構うなとの訓示があったという。 早朝、呉軍港にアメリカ軍機350機が来襲。停泊していた各艦艇は対空戦闘を開始した。この日の空襲で、戦艦『榛名』に爆弾1発、『日向』に爆弾3発、空母『天城』に爆弾1発、『葛城』に爆弾1発、『海鷹』に爆弾1発が命中しそれぞれ小破。 【呉軍港空襲】エセックス艦載機の攻撃を受ける空母葛城 ※写真画像:エセックス艦載機の攻撃を受ける空母葛城/呉軍港空襲 重巡洋艦『利根』は至近弾で損傷、空母『龍鳳』は爆弾数発とロケット弾を受け中破、軽巡洋艦『大淀』は至近弾により浸水し、さらに爆弾2発を受け中破した。 また、入渠中の潜水艦『呂67』も空襲を受け小破したほか、『伊400』も損傷したとされている。 一方、日本海軍航空隊も決死の覚悟で反撃を行う。 7時8分、室戸岬に最も接近していた空母『フランクリン』に、1機の「銀河/双発爆撃機」が低空で接近、緩降下爆撃で徹甲爆弾2発を投下。爆弾は2発とも命中し、飛行甲板を貫通、格納庫で炸裂した。『フランクリン』は浸水し右舷に傾斜、内部では火災が発生し、甲板上では出撃待機中だった航空機が次々に爆発した。この攻撃のみで約800名が死亡したという。 【呉軍港空襲/九州沖航空戦】空母フランクリン大破 ※写真画像:大破し浸水、右に傾斜した空母フランクリン/九州沖航空戦 また、同様に最も接近していた空母『ワスプ』も日本軍機の攻撃を受け大破、『エセックス』が中破したとされている。 四国上空では、「彩雲/艦上偵察機」が敵情を把握し入電に成功した後、被弾したため7時45分頃に敵機に体当たりを試み自爆。来襲した「F6Fヘルキャット」「F4Uコルセア」「SB2Cヘルダイバー」計160機に対し、第343海軍航空隊「紫電/局地戦闘機」と「紫電改」計63機が迎え撃つ。 この大規模な航空戦のなかで、アメリカ軍の圧倒的物量を相手に第343海軍航空隊は58機撃墜の戦果を上げ、未帰還は16機にとどまったという。戦果誤認もあったとされるが、少なくとも互角以上に奮闘したとみられる。 その証言として、このとき第343海軍航空隊と交戦した戦闘機隊長コナントはかつて経験したことのない恐るべき反撃を受けたと語り、第58任務部隊司令官マーク・ミッチャー中将はよく訓練された強力な戦闘機隊が現れた高性能の新鋭機で編成され、特に対戦闘機空戦に熟達などの言葉を残した。 3月30日、呉軍港と広島湾に、アメリカ軍機が1,034個の機雷を投下。空襲前に安芸灘にでていた戦艦『大和』は、護衛の駆逐艦『涼月』『冬月』などと共に徳山沖で待機していたが、数日後、沖縄水上特攻へと出撃していった。

呉軍港空襲7月24日、全艦対空戦闘開始!

【呉軍港空襲】重巡洋艦『利根』 ※写真画像:停泊中の空襲、重巡洋艦利根/呉軍港空襲 1945年5月25日、アメリカ海軍第58任務部隊は、第三艦隊に所属したことで第38任務部隊へと名称変更。また、5月11日に、旗艦『バンカー・ヒル』が特攻機2機の攻撃を受け大破したため『エンタープライズ』に旗艦を変更した。しかし5月14日、『エンタープライズ』も特攻機により中破したため、第38任務部隊の旗艦は『ランドルフ』となった。 7月24日、第38任務部隊は再び呉軍港空襲を行った。これを迎え撃ったのは第343海軍航空隊であったが、度重なる戦闘で戦力は消耗しており、敵機大編隊950機に対し出撃機は「紫電改」21機であったとされる。 呉軍港には未だ多数の日本海軍艦艇が停泊していたが、機雷封鎖や燃料切れで動くことすらままならず、そして今回は航空支援も期待できない。各艦艇は独自に、決死の覚悟で対空戦闘に臨む以外なかった。 群れをなして押し寄せる敵航空機群に対し、全艦高角砲・機銃・主砲三式弾・噴進砲などによる激しい弾幕が展開されるなか、戦艦『榛名』に爆弾1発が命中、『伊勢』は艦橋に直撃弾を受け艦長や指揮官が戦死、『日向』も被弾により艦長が戦死した。 空母『天城』には爆弾2発、『葛城』は爆弾1発が命中、燃料が残っていた『海鷹』は弾幕と回避行動で切り抜けるが、機雷に接触し中破、航行不能に。 重巡洋艦『青葉』は爆弾1発と至近弾1発、『利根』は左舷中央部に直撃弾を受け損傷。軽巡洋艦『北上』は大破し航行不能となる。『大淀』は爆弾数発を受け炎上しながら着底したが、漁船なども協力し鎮火・排水に成功、防空砲台として26日に復旧した。遠隔操作の無人艦として知られる『摂津』は空襲を受け大破、そのまま着底した。 装甲巡洋艦『出雲』は至近弾により転覆着底、『磐手』は損傷により浸水、26日に着底した。駆逐艦『宵月』『樺』『萩』は被弾し損傷、『椿』は備讃瀬戸で空襲を受け中破した。 また、この日の戦闘で、生き残りの精鋭・第343海軍航空隊21機は圧倒的不利な状況のなかアメリカ軍機を16機撃墜したが、同時に6名のパイロットを失う結果となった。

最後の呉軍港空襲、散りゆく日本海軍艦艇

【呉軍港空襲】戦艦榛名、大破 ※写真画像:激しい爆撃を受ける戦艦榛名/呉軍港空襲 1945年7月28日、アメリカ海軍第38任務部隊によって、日本海軍にとどめを刺すべく、さらなる呉軍港空襲が行われた。 その戦闘のなかで戦艦『榛名』は三式弾による主砲射撃などで「B-24」2機を撃墜するも、多くの命中弾を受け大破着底。『伊勢』は直撃弾11発を受け大破着底、『日向』も大破着底したとされる。 空母『天城』は直撃弾1発と至近弾5発により大破浸水、翌日に横転した。『葛城』は爆弾2発と至近弾を受けるも中破にとどまる。機雷のダメージで航行不能となっていた『海鷹』は、直撃弾3発を受け浸水、そのまま着底した。 重巡洋艦『青葉』は直撃弾4発、『利根』は直撃弾2発と至近弾6発を受けそれぞれ大破着底、軽巡洋艦『大淀』は艦橋付近に被弾し大破、横転着底した。 駆逐艦『朝顔』は備讃瀬戸西方で被弾し損傷。平郡島北岸沖に停泊していた『梨』はロケット弾数発を受け損傷し、浸水により沈没。三重県尾鷲港にいた潜水母艦『駒橋』も呉軍港空襲に巻き込まれ損傷、浸水により着底した。 完成間近であった潜水空母『伊404』は建造を中止し島影に隠れていたが、空襲を受け大破、技術隠匿のため自沈処分された。 これら一連の呉軍港空襲及び機雷封鎖により、呉軍港はその機能を完全に停止することとなった。そしてその後、8月6日に広島市、8月9日に長崎市へ原子爆弾が投下されたことで日本軍は降伏。約3年半続いた太平洋戦争は終戦を迎えた。 → エピローグ:新たなる日本国の始まり 動画:呉軍港空襲後、ただ静かに沈座する日本海軍艦艇たち

呉軍港空襲での各国の損害状況

日本海軍>> 【沈没】:『出雲』『梨』『伊404』 【大破着底】:『天城』『海鷹』『榛名』『伊勢』『日向』『摂津』『青葉』『利根』『駒橋』『磐手』 【大破】:『北上』 【中破】:『葛城』『龍鳳』『椿』 【小破】:『生駒』『大淀』『宵月』『樺』『萩』『朝顔』『伊400』『呂67』 ▽航空機:損失・損傷250機以上 ■呉軍港:機能停止 アメリカ海軍>> 【大破】:『フランクリン』『ワスプ』 【中破】:『エセックス』 【小破】:『イントレピッド』『ヨークタウン』『エンタープライズ』 ▽航空機:損失・損傷100機以上

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