ミッドウェー海戦/Battle of Midway
ミッドウェー海戦は、ミッドウェー島攻略をめぐり、大日本帝国海軍連合艦隊とアメリカ海軍太平洋艦隊が激突した大規模艦隊戦。日本軍にとっては、アメリカ軍空母を誘い出し撃滅するミッドウェー作戦(MI作戦)の第一段階であったが、しかしその結果は太平洋戦争(大東亜戦争・第二次世界大戦)の勝敗自体を大きく決定づけるものとなった。このミッドウェー海戦以降、日米双方の運命は明確に分かれていくこととなる。
ミッドウェー海戦は、ミッドウェー島攻略をめぐり、大日本帝国海軍連合艦隊とアメリカ海軍太平洋艦隊が激突した大規模艦隊戦。日本軍にとっては、アメリカ軍空母を誘い出し撃滅するミッドウェー作戦(MI作戦)の第一段階であったが、しかしその結果は太平洋戦争(大東亜戦争・第二次世界大戦)の勝敗自体を大きく決定づけるものとなった。このミッドウェー海戦以降、日米双方の運命は明確に分かれていくこととなる。
ミッドウェー海戦に至る前、ミッドウェー島を攻略するうえで不安要素は様々にあったが、海戦において勝利が続いていた連合艦隊は、南雲機動部隊をはじめ司令部までもが自信に満ち溢れ、この作戦の実施についてはネガティブな面をあまり考慮していなかったという。 一方、ミッドウェー作戦に関する暗号の解読に成功していたアメリカ軍は、日本軍の情報を逐一収集・分析しながら、利用可能な兵力をかき集め、いずれ生起するであろうミッドウェー海戦に備えていた。 潜水艦による哨戒が遅れ、航空機による索敵も充分にできていなかった日本軍は、発見できていたはずのアメリカ艦隊を見逃したまま、6月5日午前3時30分、南雲機動部隊の空母『赤城』『加賀』『飛龍』『蒼龍』から出撃した航空機108機からなる攻撃隊によるミッドウェー島への空襲を開始した。 迎撃機を零戦隊がことごとく撃破しつつ、アメリカ軍の戦闘指揮所をはじめとした基地施設を次々に破壊していく攻撃隊。これに続きミッドウェー基地にさらに打撃を与えるべく南雲機動部隊は第二次攻撃隊の準備を決定するが、この時既に、アメリカ艦隊が南雲機動部隊を発見していた。
【日本海軍】 ■指揮官 「山本五十六」「南雲忠一」「近藤信竹」 ▼空母:6隻 『鳳翔』『瑞鳳』『赤城』『加賀』『飛龍』『蒼龍』 ▼戦艦:11隻 『大和』『長門』『陸奥』『日向』『伊勢』『扶桑』『山城』『榛名』『霧島』『金剛』『比叡』 ▼重巡洋艦:10隻 『利根』『筑摩』『愛宕』『鳥海』『妙高』『羽黒』『熊野』『鈴谷』『最上』『三隈』 ▼軽巡洋艦:7隻 『川内』『北上』『大井』『長良』『由良』『神通』『香取』 ▼駆逐艦:54隻 『夕風』『吹雪』『白雪』『叢雲』『初雪』『磯波』『浦波』『敷波』『綾波』『朝霧』『夕霧』『白雲』『天霧』『海風』『山風』『江風』『涼風』『有明』『夕暮』『時雨』『白露』『野分』『嵐』『萩風』『舞風』『風雲』『夕雲』『巻雲』『浦風』『磯風』『谷風』『浜風』『秋雲』『三日月』『村雨』『五月雨』『春雨』『夕立』『朝雲』『峯雲』『夏雲』『朝潮』『黒潮』『親潮』『雪風』『天津風』『時津風』『初風』『不知火』『霞』『陽炎』『霰』『早潮』『荒潮』 ▼潜水艦:23隻 『伊9』『伊15』『伊17』『伊19』『伊25』『伊26』『伊121』『伊122』『伊123』『伊156』『伊157』『伊158』『伊159』『伊162』『伊164』『伊165』『伊166』『伊168』『伊169』『伊171』『伊172』『伊174』『伊175』 ▼水上機母艦:3隻 『千代田』『千歳』『日進』 ○工作艦:1隻 『明石』 VS 【アメリカ海軍】 ■指揮官 「F・J・フレッチャー少将」「R・A・スプルーアンス」 ▼空母:3隻 『エンタープライズ』『ホーネット』『ヨークタウン』 ▼重巡洋艦:7隻 『アストリア』『ポートランド』『ミネアポリス』『ニュー・オーリンズ』『ヴィンセンズ』『ノーザンプトン』『ペンサコラ』 ▼軽巡洋艦:1隻 『アトランタ』 ▼駆逐艦:19隻 『モリス』『ラッセル』『アンダーソン』『ヒューズ』『グウィン』『フェルプス』『エイルウィン』『モナハン』『ウォーデン』『バルチ』『コゥニンガム』『ベンハム』『エレット』『モーリー』『デューイ』『モンセン』『ブルー』『ラルフ・タルボット』『ハムマン』 ▼潜水艦:19隻
6月5日4時15分、南雲忠一中将が各艦へ「第二次攻撃隊を編成せよ。兵装は爆装に転換」と通達。ほぼ同時刻、アメリカ海軍太平洋艦隊では、発見した日本艦隊へ向けて、第16任務部隊の空母『エンタープライズ』『ホーネット』から航空機117機からなる攻撃隊が出撃。さらに、これより遅れて『ヨークタウン』から35機が発進した。こうして、ミッドウェー海戦はアメリカ軍の先制攻撃で幕を開けることとなる。 4時28分、ついに日本艦隊も索敵により敵艦隊を捉える。突如として現れた予想外の相手に、兵装の転換作業は一時中断された。この時、南雲司令部に動揺や興奮で混乱が生じたという一方で、動揺はなく平静だったという証言もあるのは、この事態をある程度予測していた者もいたということかもしれない。 4時53分、一転して緊迫感に包まれた南雲機動部隊に、ミッドウェー基地から出撃したアメリカ海兵隊所属の「SBDドーントレス爆撃機」16機が到達、攻撃を開始する。狙われたのは『赤城』であった。しかしこれは零戦隊が迎撃し半数を撃墜。それをかいぐくり投下された爆弾も命中せず、魚雷は全て回避した。 (ミッドウェー海戦:回避行動をとる空母赤城) 南雲機動部隊にダメージはなかったが、この間、ミッドウェー空襲から帰還した第一次攻撃隊が上空で待機し燃料を消耗した。 敵大艦隊が現れ1分1秒を争う状況に、『飛龍』『蒼龍』を率いる山口多聞少将が「現装備ノママ直チニ攻撃隊ヲ発進セシムルヲ至当ト認ム」と進言するも、南雲忠一中将はそれを却下。ミッドウェー基地を攻撃予定だった第二次攻撃隊の兵装を再び、陸用爆弾から、魚雷や対艦250kg爆弾へ転換するよう指示した。その理由としては、以下を挙げている。 ■このまま第二次攻撃隊の発艦に甲板を使用すれば、上空待機し燃料が尽きかけている第一次攻撃隊約100機を見捨てることになる ■迎撃のために飛び立った零戦隊を収容しなければ護衛をつけられず、先ほどの敵攻撃隊のように簡単に撃墜される ■陸用爆弾では艦船への命中精度が悪く、命中しても効果が薄い ミッドウェー海戦において、この時兵装を転換せずそのまま出撃させていれば結果が変わったとする"運命の5分間"説があるが、後の研究や証言で、どちらにせよ攻撃隊発進は間に合わなかったとされている。
ミッドウェー海戦は急展開を迎える。第一次攻撃隊の収容完了まで残すところあと10分程度となった6月5日6時20分頃、アメリカ艦隊から出撃していた攻撃隊が続々と南雲機動部隊の上空に到達。 直掩の零戦隊が果敢に迎撃し数十機を撃ち落とすも、その勢いは途絶えず、低空の敵雷撃隊に対応していた7時22分、ついに高高度からの急降下爆撃を許してしまう。見張り員が「敵、急降下!」と叫ぶも間に合わず、上空より敵艦爆隊が次々と来襲。空母『加賀』に4発、『蒼龍』に3発、『赤城』に2発の爆弾が命中した。 この間、わずか6分程度であったという。 『加賀』では給油タンク車に命中した1発が大爆発。艦橋が吹き飛び、さらに魚雷や爆弾、燃料などが誘爆を起こした。『蒼龍』においても、前部エレベーターに命中した1発が大爆発を引き起こし、7時40分に機関が停止、さらにこの5分後に総員退去が発令された。『赤城』では、投下された爆弾が飛行甲板を突き破り格納庫内で爆発、誘爆を起こし大火災が発生した。 ミッドウェー海戦は、この瞬間、ほぼ決着がついた状態となったが、アメリカ艦隊と会敵した南雲機動部隊には、まだ戦える空母が存在していた。 7時58分、南雲機動部隊の空母でただ1隻、急降下爆撃を免れた『飛龍』が、山口多聞少将の指揮のもと反撃を開始する。山口多聞少将は「帝国の栄光のため戦いを続けるのは、一に飛龍にかかっている」と宣言し、直ちに第一波攻撃隊24機を出撃させた。 9時00分、『飛龍』より飛び立った第一波攻撃隊がアメリカ艦隊の空母『ヨークタウン』を発見、攻撃を開始した。「F4Fワイルドキャット」の迎撃により約半数を撃墜されながらも、艦爆隊の放った爆弾3発が『ヨークタウン』に命中。これによりボイラー室で火災が発生した『ヨークタウン』は、動力を失い航行不能となった。 (ミッドウェー海戦:飛龍攻撃隊の空襲を受ける空母ヨークタウン) この直後、別のアメリカ軍機動部隊を新たに発見したとの報告を受け、10時30分、『飛龍』から計16機で構成された第二波攻撃隊が出撃したが、この後発見したのは応急処置により復旧した『ヨークタウン』だった。しかしそれを新たな敵空母だと判断した第二波攻撃隊は、そのまま『ヨークタウン』への雷撃に移った。 迎撃機の猛攻をかいぐくりつつ第二波攻撃隊の放った魚雷は4本のうち2本が命中し、大爆発を引き起こした。その火柱は4500m上空にまで達したという。大破した『ヨークタウン』は完全に航行不能となり、総員対艦が命じられた。
『ヨークタウン』が雷撃を受けていた6月5日11時30分頃、アメリカ艦隊は再び南雲機動部隊の現在位置を捉え、爆撃機のみで構成した計24機の攻撃隊を空母『エンタープライズ』から発艦させていた。 一方、日本軍連合艦隊の南雲機動部隊では、12時40分までに、敵空母を攻撃した攻撃隊のうち生き残った航空機全機が『飛龍』に着艦したが、さすがに単独での2度にわたる攻撃で戦力を消耗しきっており、戦える機体は残りわずかとなっていた。 14時00分、そんな『飛龍』にアメリカ艦隊から放たれた艦爆隊24機が到達、急降下爆撃を開始する。零戦6機が果敢に迎え撃つも対応しきれず、4発の爆弾が命中し『飛龍』は大破、戦闘不能に。 (ミッドウェー海戦:大破炎上する空母飛龍) 南雲機動部隊の空母が次々に大破炎上していく経過を知らされ、連合艦隊旗艦『大和』の連合艦隊司令部では楽観的な空気が一変し動揺が広がった。しかし連合艦隊司令長官・山本五十六大将は将棋を指しながら、「ほう、またやられたか」と極めて冷静であったという。 16時13分、航行不能の『蒼龍』が再び爆発を起こし沈没。その約10分後、炎の海と化していた『加賀』も大爆発の末に沈没し、『赤城』『飛龍』は翌日未明に雷撃によって処分された。南雲機動部隊の空母が全滅したことにより、ミッドウェー海戦における空母戦は終わった。 ここから全兵力をもって敵を撃滅、ミッドウェー作戦を継続するという意向のもとで夜戦も検討されたが、この後、重巡洋艦『筑摩』の偵察機より「炎上米空母の後方に、更に米空母4隻を発見」という報告が入ったことで、21時15分、山本五十六長官はついにミッドウェー作戦の中止を決定した。ちなみにこの時、自艦隊空母全滅を経験した南雲忠一中将は、「敵航空母艦の予想外に優勢なるを初めて知れり」と、アメリカ海軍太平洋艦隊に対する認識を改めている。 6月6日、日本軍連合艦隊は撤退を開始し、ミッドウェー海戦もいよいよ終幕間近となった。続く6月7日、アメリカ太平洋艦隊第16任務部隊が追撃を開始する。 狙われたのは、衝突事故により速力が落ちた重巡洋艦『最上』と、それを護衛する重巡『三隈』、駆逐艦『荒潮』『朝潮』だった。7時00分から11時00分にかけて、『エンタープライズ』『ホーネット』から出撃した計77機の攻撃隊による猛攻を受け『最上』が大破炎上、『三隈』は大爆発を引き起こす。またその後、救助作業を行っていた『荒潮』『朝潮』も攻撃を受け損傷した。 アメリカ軍機が去った後、『最上』『荒潮』『朝潮』はなんとか空襲圏外への脱出に成功したが、漂流状態であった『三隈』は日没直前に転覆、そのまま海に沈んだ。
ミッドウェー海戦で空母戦の決着がつき連合艦隊が撤退を始めた頃、ミッドウェー島のアメリカ軍基地砲撃などを単独で行っていた潜水艦『伊168(伊号第百六十八潜水艦)』には新たな任務が与えられていた。しぶとく生き残り、真珠湾へ向かって曳航されている敵空母『ヨークタウン』の撃沈である。 6月7日の午前1時頃、『伊168』は、護衛の駆逐艦『グウィン』『モナハン』『バルチ』『ベンハム』と共に曳航される『ヨークタウン』と、それに接舷し復旧作業を行う『ハムマン』を発見する。厳重な警戒態勢のなか、慎重に追跡しながら隙を伺い、発見からおよそ9時間後の10時34分、『伊168』は4本の魚雷を発射した。 放った魚雷は『ヨークタウン』と『ハムマン』それぞれに1発ずつ命中。『ハムマン』は大爆発を起こし降り注ぐ残骸のなかで轟沈、さらに海中でも爆発した。『ヨークタウン』は健在であったが修復不能のダメージを負い、翌日未明に沈没したとされている。 護衛の駆逐艦部隊の『伊168』への反撃は苛烈を極め、『伊168』もまた大きなダメージを負ったが、なんとかこの海域からの脱出に成功。大日本帝国海軍にとって惨劇ともいえるミッドウェー海戦であったが、『伊168』の活躍により、アメリカ軍への確実な一矢を報いることには成功した。
日本海軍>> 【沈没】:『赤城』『加賀』『飛龍』『蒼龍』『三隈』 【大破】:『最上』『伊168』 【中破】:『荒潮』 【小破】:『朝潮』 アメリカ海軍>> 【沈没】:『ヨークタウン』『ハムマン』