大日本帝国海軍 連合艦隊
:航空母艦『大鳳』
正規空母(航空母艦)『大鳳/たいほう』は、大日本帝国海軍によって太平洋戦争(大東亜戦争・第二次世界大戦)末期に竣工した。飛行甲板に装甲が施された、日本海軍初の装甲空母で、当時は不沈艦と謳われていた。また、日本の空母で唯一、65口径10cm高角砲(九八式十糎高角砲)を装備していたとされる。マリアナ沖海戦にて、アメリカ海軍潜水艦『アルバコア』の雷撃を受け航空機燃料が漏洩、引火し大爆発の末に沈没した。
水中防御の強化、高角砲2基追加などを盛り込んだ改大鳳型航空母艦の建造も計画されたが、戦局の悪化に伴い中止となる。この改大鳳型航空母艦が、日本海軍が設計した最後の正規空母であったとされている。
日本海軍:空母『大鳳』の性能
空母大鳳には、飛行甲板の装甲や三式制動装置など、日本空母では初となる技術が施された。イギリスに次ぎ世界で2番目に竣工した装甲空母である。
空母は、飛行甲板が爆撃されダメージを受けると何もできなくなるうえに、爆弾が貫通し内部で爆発すれば致命的な損害となるが、大鳳以前に建造された空母は、まるで無防備といった状態だった。
そこで空母大鳳の飛行甲板には、高度700mからの500kg爆弾による急降下爆撃にも耐えうる重装甲が装備されることとなった。
■全長:260.60m
■全幅:33.6m
■乗員:2,038名
■排水量:37,268t
■巡航能力
□速力:33.69kt
□航続距離:20,329km(18kt)
■戦時最終兵装
□65口径九八式10cmA型連装高角砲:6基
□九六式25mm3連装機銃:17基
□九六式25mm単装機銃(移動式):25挺
□爆雷:6個
■レーダー
□二式2号電波探信儀1型:2基
□三式1号電波探信儀3型:1基
■搭載機:54機(※マリアナ沖海戦時)
□零式艦上戦闘機:19機
□天山艦上攻撃機:14機
□彗星艦上爆撃機:17機
□九九式艦上爆撃機:1機
□二式艦上偵察機:3機
空母『大鳳』竣工、マリアナ沖へ
※写真画像:1944年5月、フィリピン・タウイタウイに停泊する大鳳
空母大鳳は、川崎重工業神戸造船所にて起工、1944年3月7日に竣工した。一部に最新鋭の技術を装備する計画でありながら、工期は大幅に短縮され、さらに人手不足のため未熟な徴用工たちによって建造されたという。また、盛り込まれた様々な新基軸に、大鳳乗組員も不慣れであったとされる。
3月28日、大鳳は、零式艦上戦闘機・彗星・天山・月光・零式水上観測機・零式水上偵察機・司令部偵察機、計64機を搭載し呉を出港した。護衛は駆逐艦初月、若月。
4月4日、シンガポール入港時に舵取装置が故障、配電盤が火災を起こし一時的に操舵不能となる。6月13日には、対潜哨戒にあたっていた天山が着艦に失敗し、飛行甲板の九九式艦上爆撃機に追突、炎上させるなどのトラブルも。この事故により、大鳳は早くも搭載機5機を失う。
不穏な空気が漂うなか、同日に「あ号作戦決戦用意」が発令され、大鳳はマリアナ沖へと向かった。
第三艦隊旗艦・不沈空母『大鳳』
6月19日、空母大鳳は、大日本帝国海軍・小沢治三郎中将率いる第三艦隊の旗艦としてマリアナ沖海戦へと突入。7時45分、大鳳から零式艦上戦闘機16機、彗星17機、天山9機、計42機の攻撃隊が出撃する。
このとき、小沢機動部隊を密かに追跡している敵がいた。アメリカ海軍潜水艦アルバコアである。
8時9分、アルバコアが魚雷6本を発射。小沢機動部隊旗艦・大鳳を目がけ雷跡が伸びてゆく。その直後、上空で編隊を離れ、攻撃隊の前方を横切った1機の彗星がいた。小松幸男兵曹長と国次萬吉上飛曹が乗る機体である。
次の瞬間、小松機は、250kg爆弾を抱えたまま雷跡へと突っ込んだ。自爆覚悟で大鳳を守るためであったとされる。
また、護衛の駆逐艦初月、若月が直ちに爆雷25発を投下し反撃したが、アルバコアは深深度潜航で退避した。
そんななか、大鳳見張員も雷跡に気付き報告、大鳳は回避を試みる。5本の魚雷は大鳳の後方を掠めるように通過したが、8時10分、6番目の魚雷が右舷前部に命中。この被雷により大鳳は中破、前部がやや沈下したものの、左舷後部への注水によりすぐに復旧した。
しかし、下部格納庫の前部昇降機付近からガソリンが漏れ出し始める。
大鳳はこの後も攻撃隊を発進させるなど戦闘を続行していたが、艦内ではガソリンが気化し、吸い込んで失神する乗員が続出。この深刻な状況から、艦内各部署へ「気化ガス充満、タバコ禁止、防毒マスク着用、火花が出るような作業も禁止」と伝達される。
しかし、第二次攻撃隊のうち1機が着艦に失敗したことが引き金となり、14時32分、大鳳が突然の大爆発を起こす。原因は様々に指摘されているが、着艦失敗時に起きた火災が直接的な原因といわれている。
その後、大鳳は爆発を繰り返しながら左舷に大きく傾斜、16時28分に沈没した。飛行甲板の防御力を飛躍的に向上させ不沈空母とまでいわれた艦の、皮肉な最後であった。
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